ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台
放送車や取材ヘリが、頻繁にポイントを変えながら収録した映像・音声を電波に乗せて基地局に送ってくる。基地局はアンテナの方調が必要だが手動では困難を伴う。その作業を自動化したのが、松浦機械製作所徳島市)が開発した『ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台』480万円だ。次々と移動する対象を捉え、画質・音声を受信できるよう方向を自動調整する
移動体放送支援システムを共同開発
放送車や取材のヘリで収録された映像・音声は放送局に持ち帰って放送されるだけじゃない。駅伝やマラソンの中継、あるいは台風や山火事など自然災害の状況など、リアルタイムであることへのニーズは少なくない。これまでは手動でパラボラアンテナの向きを調整していたが、それではどうしても時間がかかってしまい、素早い対応が難しくなってくる。そこで、松浦機械製作所が「電波の強弱を測定することで位置を特定できるのではないか」という点に目をつけ、開発を手がけたのが放送支援システムだ。まず、このシステムを採り入れ実用化したのが『ニュースカー・ワンタッチ伝送システム』である。
パソコンと専用のソフトウェア、GPS(全地球測位システム)、車両の進行方向を自動感知するセンサーなどからなるシステムで車両上部にパラボラアンテナを搭載した雲台が載る。これらにより放送車の現在位置を自動的に判断し電波の伝送方向を決定。同時に、伝送できる位置・範囲にいるのかどうかの判断も可能となった。
操作は音声ガイド付きのモニタ画面上でボタン操作するタッチパネル式。ここでもオペレータへの技術負担が軽減されている。ワンタッチでFPU(中継用伝送装置)送受信アンテナを自動方調できるため、悪天候時や夜間の伝送にも威力を発揮する。
このシステムは、同社が NHK徳島放送局の技術協力を得て開発したもので、これまでに中・四国、九州などのNHK放送局および四国の民放テレビ局でも導入され、活躍の場を広げつつある。
自動方調で緊急報道・放送にも対応
さて、放送車や取材ヘリから基地局に電波が送られる場合、伝送距離の長い指向性アンテナが使われる。基地局のアンテナも移動体に向けて一刻も早くアンテナを調整する必要がある。ここでの自動化を図るのが、今回、開発された『ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台』なのだ。基地局ではによって移動体の位置を捉え続け、制御ソフトのマップ上にリアルタイムで表示する
パラボラアンテナの向きが赤いラインで示されオペレーターの状況把握が容易である。また、パラボラアンテナの向きは、移動体と基地局のアンテナから発する電波の強さである『電界強度』を測定し、微調整まで自動で行える。さらに、空中にいる取材ヘリの位置もと『電界強度』測定によって、正確に捉えることができる。この操作もオペレータが『ヘリサーチ』と表示されたボタンを、マウス操作でクリックするだけ。
水平 360度、垂直方向-15〜45度の範囲で最も『電界強度』の高い角度と方位を自動で探し出し、方調する仕組みになっている。また、過去の伝送ポイントを最大
200カ所記録できるメモリ機能も搭載されており、伝送実績ポイントをダイレクトで方調することもできる。
ところで基地局は、山頂などの高い場所に設置される。そこにオペレータを常に貼り付けておくというのは、効率が悪く負担も大きい。しかし、同システムでは電話回線や光ケーブル、携帯電話、無線などを使うことで、遠隔操作も可能である。
同システムは、すでに四国の民放テレビ局に導入され、実績を上げている。構成部品を単純化することで、メンテナンスを容易にし、また低予算での実用化も実現した。今後、まざまな業界での導入も可能性がみえてきたのではないだろうか。
その先をみる工学博士の視点
松浦機械製作所の本業は機械部品製造。自動車のベアリング、ステアリング部品などの設計・製造・加工が主だが、現在はソフト開発、計測・制御技術といった新たな分野でも実績を上げている。新分野として放送支援システムの開発に向かったのは「パラボラアンテナを回転させる雲台がきっかけだった」と松浦社長。雲台にはメカニズム機構)が組み込まれている。同社の十八番だ。
放送車の走行による振動に耐えられる雲台の設計。そこから風雨によってパラボラアンテナなどの機材の故障を防ぐための専用レドームの考案。これを自動化するシステムへと思考がつながっていったのだろう。一つのことに終わらない、その先を見る探求心は、松浦社長の工学博士という一面に宿っているのかもしれない。
http://www.matsuura-kikai.com/pdf/Products%20Information.pdf#search='ヘリ自動追尾%20遠隔操作
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