小形無人ヘリコプター


自律システム
基地局のパソコンで、無人ヘリコプターを指定した空間に静止させることができる。基地局との通信波が途切れる事態が発生した場合は、機体のデータに基づき、電波が回復する位置まで自動帰還が可能となっている

機体自律システム
無人ヘリコプターからの映像は、モニタに表示され映像を見ながら撮影方向の変更、ズームなど遠隔操作を行う

基地局自律システム
基地局では、車内の操縦用動画表示モニタ、調査用PC を使用して無人ヘリコプターの運航を行う。調査用PCでは、水平方向の機体の現在位置が表示される。高度表示と合わせることで機体の空間位置を把握できるようになっている。上下の速度を指示できる操縦ダイアログも表示されており、パソコン上で機体を自由に操作することができる

パソコンに表示された地図上で、座標を指定することで、機体を目標まで移動させる機能も装備している。ただし、障害物を検知する機能はない。フライト時の機器チェックと不測の事態への対応は操縦用PC と動画表示モニタで行う。操縦用PC には、操縦用カメラ。調査用カメラからの画像。水平速度、上下方向速度、高度、冷却水温、バッテリ電圧、システムエラー情報、フライトモード等の機体情報が表示され、これらの情報を監視しながら機体操作を行う

また、自律制御のスイッチもこのコントローラに付いている。バックアップオペレータは、帯送信機を使用して、離着陸時の機体操作と、上空での自律システムへのコントロールの受渡し及び目視範囲内での異常時のバックアップを行う。自動追尾装置を装備している。

運用と実績
小形無人ヘリコプターを運用する構成人員は、機体オペレータ、バックアップオペレータ、撮影オペレータの3 名である。1 つのポイントでの撮影時間は、機器の設置と撤去にかかる時間はそれぞれ45 分程度である。飛行時間は80 分( 燃料10 g積載時)実際の運用では、1 回のフライトで撮影箇所数や気象条件、撮影機材の重量などを考慮して燃料の量を決めている。燃料8g積載し、離陸から着陸まで50分程度飛ばすというパターンが多かった。

災害出動実績
現状の小形無人ヘリコプターでできる調査活動内容は、写真撮影、画像伝送等による被災状況調査及び監視・観測、赤外線カメラによる地表面の表面温度分布調査、火山灰等の資料採取である。

項目調査可能条件理由
人の頭上を飛ぶことはできない機体高度をとした場合、半径hの円内に人がいないこと。高度 150m以下による飛行可能範囲 半径約1.5km 操縦用電波が届く範囲内に障害物がないこと。直進性の高い電波を使っているので物影に入ると信号が伝わらなくなる

機体の上空 45゚全方位に対し障害物がないこと。GPSの受信状態が悪化するため5個以上の衛星を捕捉する必要がある。雨天での長時間フライトは不可。目視で見える範囲で飛行すること。フライト可能風速は10m/s以下。夜間飛行は地上での風速が7m/s以下。上空は地表より風が強いため電波ノイズがないこと。

地上局設置位置
    観測エリアを見通せること
    観測点までの安全なルートがあること
    上空が開けていること
    安全地帯であること<
    安定していること(洋上等は不可

観測エリアまでの距離と高度

電波を遮る物がないこと
人の上を飛ばせない
GPSの受信状態
運用要員の安全確保
基地局は動いてはならない
電波が届く範囲

道路整備状況、工事状況写真等の撮影の場合、道路の真上からの撮影要望がある。しかし、開通している道路の上空でホバリングさせながらの撮影は禁止している。そのため実際の撮影は斜め方向からとなる。

無人ヘリコプターの運航は気象条件に大きく左右される。海に面した崖での近接撮影は地上では風速が弱くても、崖の上では強い風が吹いている場合がある。そこから吹き下ろす風により無人ヘリコプターが急降下するなど危険である。また切り立った崖や木の多い場所では電波が遮られる。調査対象斜面が日影になって撮影した画像が暗くなってしまう。そのため基地局の設置位置や調査時間の検討が重要だ。自律システムでは高度を一定に保ったまま水平方向に移動して撮影ができた、また、低空からの近接撮影も可能だから、この種の調査は得意分野である。

今後の方針
無人ヘリコプターの機体を軽量化すること。飛行速度を向上させること。強風対応システムを追加することを検討している。通信距離を拡大することで、より遠距離から危険区域を調査することが可能となり、人員の安全を確保することができる。一度のセットアップで調査できる範囲も広がる。設置・撤収作業を繰り返し行う手間を省き、調査時間の短縮となる。無指向性のアンテナの導入は、基地局からの見通しが悪い箇所

現行の指向性アンテナでは電波が途絶えてしまうような岩陰等)での飛行も可能にする。無人ヘリコプター自体が障害物を検知し、回避できる安全装置を装備すること。レーザー等を用いた高精度の測量機器の搭載を検討している


http://www.hkd.mlit.go.jp/topics/gijyutu/pdf_files_h18/04anzen/aa-29.pdf#search='無人%20遠隔操作%20ヘリ%20%20指向性アンテナ%20自動追尾%20



ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台


放送車や取材ヘリが、頻繁にポイントを変えながら収録した映像・音声を電波に乗せて基地局に送ってくる。基地局はアンテナの方調が必要だが手動では困難を伴う。その作業を自動化したのが、松浦機械製作所徳島市)が開発した『ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台』480万円だ。次々と移動する対象を捉え、画質・音声を受信できるよう方向を自動調整する

移動体放送支援システムを共同開発
放送車や取材のヘリで収録された映像・音声は放送局に持ち帰って放送されるだけじゃない。駅伝やマラソンの中継、あるいは台風や山火事など自然災害の状況など、リアルタイムであることへのニーズは少なくない。これまでは手動でパラボラアンテナの向きを調整していたが、それではどうしても時間がかかってしまい、素早い対応が難しくなってくる。そこで、松浦機械製作所が「電波の強弱を測定することで位置を特定できるのではないか」という点に目をつけ、開発を手がけたのが放送支援システムだ。まず、このシステムを採り入れ実用化したのが『ニュースカー・ワンタッチ伝送システム』である。

パソコンと専用のソフトウェア、GPS(全地球測位システム)、車両の進行方向を自動感知するセンサーなどからなるシステムで車両上部にパラボラアンテナを搭載した雲台が載る。これらにより放送車の現在位置を自動的に判断し電波の伝送方向を決定。同時に、伝送できる位置・範囲にいるのかどうかの判断も可能となった。

操作は音声ガイド付きのモニタ画面上でボタン操作するタッチパネル式。ここでもオペレータへの技術負担が軽減されている。ワンタッチでFPU(中継用伝送装置)送受信アンテナを自動方調できるため、悪天候時や夜間の伝送にも威力を発揮する。

このシステムは、同社が NHK徳島放送局の技術協力を得て開発したもので、これまでに中・四国、九州などのNHK放送局および四国の民放テレビ局でも導入され、活躍の場を広げつつある。

自動方調で緊急報道・放送にも対応
さて、放送車や取材ヘリから基地局に電波が送られる場合、伝送距離の長い指向性アンテナが使われる。基地局のアンテナも移動体に向けて一刻も早くアンテナを調整する必要がある。ここでの自動化を図るのが、今回、開発された『ヘリ自動追尾パラボラアンテナ雲台』なのだ。基地局ではによって移動体の位置を捉え続け、制御ソフトのマップ上にリアルタイムで表示する

パラボラアンテナの向きが赤いラインで示されオペレーターの状況把握が容易である。また、パラボラアンテナの向きは、移動体と基地局のアンテナから発する電波の強さである『電界強度』を測定し、微調整まで自動で行える。さらに、空中にいる取材ヘリの位置もと『電界強度』測定によって、正確に捉えることができる。この操作もオペレータが『ヘリサーチ』と表示されたボタンを、マウス操作でクリックするだけ。

水平 360度、垂直方向-15〜45度の範囲で最も『電界強度』の高い角度と方位を自動で探し出し、方調する仕組みになっている。また、過去の伝送ポイントを最大 200カ所記録できるメモリ機能も搭載されており、伝送実績ポイントをダイレクトで方調することもできる。

ところで基地局は、山頂などの高い場所に設置される。そこにオペレータを常に貼り付けておくというのは、効率が悪く負担も大きい。しかし、同システムでは電話回線や光ケーブル、携帯電話、無線などを使うことで、遠隔操作も可能である。

同システムは、すでに四国の民放テレビ局に導入され、実績を上げている。構成部品を単純化することで、メンテナンスを容易にし、また低予算での実用化も実現した。今後、まざまな業界での導入も可能性がみえてきたのではないだろうか。

その先をみる工学博士の視点
松浦機械製作所の本業は機械部品製造。自動車のベアリング、ステアリング部品などの設計・製造・加工が主だが、現在はソフト開発、計測・制御技術といった新たな分野でも実績を上げている。新分野として放送支援システムの開発に向かったのは「パラボラアンテナを回転させる雲台がきっかけだった」と松浦社長。雲台にはメカニズム機構)が組み込まれている。同社の十八番だ。

放送車の走行による振動に耐えられる雲台の設計。そこから風雨によってパラボラアンテナなどの機材の故障を防ぐための専用レドームの考案。これを自動化するシステムへと思考がつながっていったのだろう。一つのことに終わらない、その先を見る探求心は、松浦社長の工学博士という一面に宿っているのかもしれない。


http://www.matsuura-kikai.com/pdf/Products%20Information.pdf#search='ヘリ自動追尾%20遠隔操作




TOP