五感情報通信技術に関する調査研究会(第5回) 議事要旨 1.日時:平成13年4月18日(水)10:00〜12:00 2.場所:総務省8階 第1特別会議室 3.出席者(順不同、敬称略) 座 長:廣瀬(東京大) 構成員: 阿部(東京大)、 池井(都立科技大)、 片桐(ATR)、 小宮(インタラクティブコミュニケーションズ)、 阪田(NEC)、 佐々木(東京大)、 澤野(高砂香料)、 土井(東芝)、 鳥居(味の素)、 中山(CRL)、 西条(富山医科薬科大)、 広田(東京大)、 畚野(SCAT)、 森泉(東工大)、 安田(東京大) 事務局: 田中技術総括審議官 松井技術政策課長、 島田課長補佐、 福本係長、 小川(技術政策課) 4.配布資料 資料5−1 五感情報技術に関する調査研究会(第4回会合)議事要旨(案) 資料5−2 五感情報通信のビジネスへの展開(小宮構成員プレゼンテーション資料) 資料5−3 五感通信の研究実現と成功のために(畚野構成員プレゼンテーション資料) 資料5−4 WGの設置について 資料5−5 五感情報通信の実現イメージ 資料5−6 国内外の公的機関における五感情報通信技術に係る研究開発動向 資料5−7 五感情報通信技術の研究開発マップ 資料5−8 各感覚チャネルの特徴 資料5−9 五感情報通信技術の技術開発ロードマップ 資料5−10 五感情報通信技術の研究開発の推進方策に関する論点 資料5−11 今後の審議について 5. 議事の概要 (1)開会 (2)議事 @ 第4回会合の議事要旨の確認 事務局より資料5−1に基づき説明。コメントがあれば事務局まで連絡することとした。 A 五感情報通信技術の将来展望・五感情報通信の実現による社会経済へのインパクト 小宮構成員から、資料5−2に基づきプレゼンテーションがあった。 B 我が国が取り組むべき研究開発課題とその目標、推進方策 畚野構成員から、資料5−3に基づきプレゼンテーションがあった。 C ディスカッション ア.五感情報通信技術の将来展望・五感情報通信の実現による社会経済へのインパク ト事務局より、資料5−4〜資料5−5に基づき下記の項目について報告及び説 明。・WGの設置、第1回会合の内容について ・五感情報通信の実現イメージについて 【主な質疑応答】 佐々木構成員: 五感情報通信には大きく2つの考え方ある。1つは、5つの情報を用意して統合(association)は受け手に任せ、個々の情報の伝達精度を高める方法であり、これ については可能性があると思われる。もう1つは感覚の相互作用という時に、情報そのも のに1つの感覚を越えるアモーダルな部分を持たせる方法であり、この研究会でこの試みができれば画期的である。 廣瀬座長: 技術的にやろうとする場合、前者の方向に行きがちである。 佐々木構成員: 後者は芸術家かVRの研究者がやりはじめている。 廣瀬座長: 前者は触覚ディスプレイを作るといったようなもの。実態指向のディスプレイの ようなものができてくればそれが後者にあたると理解すればよいか。 佐々木構成員: 五感といわず二感で実現できればよい。五感にこだわる必要はない。二感の統合であっても二感以上の効果が得られることが確認できれば大きな飛躍である。 廣瀬座長: 後者が技術的にみても非常に新しい点である。 佐々木構成員: ここで皆さんの同意する五感情報通信のターゲットを決めるのがいいのではないか?何か国民が喜ぶものが見つかればよい。 広田構成員: 各感覚への刺激は工学的に考えると独立した物理量であり、化学量である。ロボットで実現することを考えると各感覚を独立に捉えがちである。感覚は解釈する人間の側で生成されていると思ってしまう。 佐々木構成員: それがassociationの発想であり、心理学にとっては主流の考え方である。別の流れとしては、感覚間のマクロな構造に共通性があるという議論があった。たとえば人間の手に視覚で捉えるきめと触覚で捉えるきめがあるとした場合にその混合がこれにあたる。もっとも基礎的なエネルギー刺激の部分ではなく、もう少し知覚に近い部分でならばそういうこともできるのではないか。 安田構成員: できることをできるようにするのは非常に大変なことである。ナノテクやバイ オはないものをあるようにする。これはすごくわかりやすい。ITの分野ではたいていの場合あるものがあるようになる。それをどのように説明するかが非常に難しい。この部分についてなにかよい知恵はないものだろうか。 畚野構成員: 私の場合はターゲットが絞られているので簡単である。一般大衆に広くわからせるのは非常に難しい。最大公約数を見つけていくしかない。 小宮構成員: ビジネスをするからにはプレゼンテーションは不可欠である。すべてを説明する必要はなく、今できることが何かということおよびそれがスパイラルに乗るということ を説明している。きちんとスパイラルに乗せて次のステップに進めるような形で説明を行 うことが重要である。 畚野構成員: 五感の利用について前向きなものばかりでなく、犯罪防止などでも役立てばよい。いろいろなことを考え、どこかで役に立てばよいとわりきったところからはじめるし かない。 佐々木構成員: この研究会でものの見方が分析的になり、情報として顕在化することによっ てコミュニケーションのあり方が変わってくるのではないか。このへんに持ち込めればこの研究の成果といえるのではないか。 澤野構成員: 香りの生理/心理効果を測定する場合、音刺激(聴覚)、光の色の識別(視覚)、モニター上のマウス操作(触覚)によるストレスを与え、その時の匂いの刺激に対する生理・心理作用をみており、香りの生理・心理の指標として三感の情報をすでに使っている。 それをうまく情報通信に結びつけられればよいのではないか。人の匂いが生理・理面に大きく作用しており、そのあたりの感性を情報として伝えられるとよい。 畚野構成員: 人の匂いが学校でのいじめの原因になっており、その解決に役立つというのも重要である。味覚でいえば、グルメ番組での利用もおもしろい。 澤野構成員: 名医は患者の匂いで疾病の度合いを判別するともいわれている。匂いは健康にも深くかかわっており、口臭、排便物はその一例。嗅覚を教育、親子のコミュニケーションなどいろいろな面に活かしてほしい。 廣瀬座長: 人間は視覚・聴覚を持っているので嗅覚などの感覚を狭めてしまっている。そういう部分に気付かせるということもある。ビジネスにつながるかはわからないが重要な点である。 澤野構成員: 帝京大学で事象関連電位(脳波の一種)の変化に着目し、香とイメージ(視覚情報)を組み合わせて脳でどのような処理をしているのかという研究が行われている。これにワード(言葉)を入れると問題は複雑化するので、現状では写真、絵などの視覚情報 のみが利用されている。 広田構成員: 触覚、力覚についても実験室レベルではあれば便利というものはある。視覚、聴覚以外の感覚を利用することによる効果について技術的に評価することは難しい。視覚と聴覚があれば触覚、力覚がなくてもだいたいのことはできてしまうので、五感であることの必要性を示すことは難しい。研究者の側から使い方のイメージを示していく必要がある。普段使っていない感覚をもっと使うようにもっていく、つまりユーザの感覚を開拓することが重要である。それぞれの感覚がどんな時にどのように役立つかを洗い出していく ということがこの研究会でできることなのではないか。 佐々木構成員: 医学の現場においては、感覚についての理論的伝統と実践とは異なっている。 これまで理論的伝統では無視されていた部分の感覚の可能性を取り上げるのもよいのではないか。 安田構成員: エンターテイメントの世界では視覚、聴覚の二感に他の三感を加えることで現 実感を増すということはいくらでも考えられる。総合的なものの他に各単体としても役立 つ部分がなければいけない。匂いは加えることよりも消すことができると役に立つのでは ないか。これは現時点では言えるのだろうか。 澤野構成員: 消臭についての研究は行われているが、必要な時に特定のニオイを消すことは 実験室レベルではできているが、現実的には不可能な状況である。 安田構成員: 原理的に不可能ということか。 澤野構成員: 部分的な消臭はオゾンや電気分解、金属を利用して可能である。酸化還元などの化学変化を利用して部分的に消臭することは可能であるが、ベンゼンやエタノールといった炭化水素系の匂いについては消臭は不可能である。どこか別の場所に移動させる以外に方法はない。嗅覚でアダプテーションを起こさない限り無理である。 安田構成員: 消臭が可能ということが言えれば、嗅覚についても役に立つことが強調できる。 廣瀬座長: 五感ばらばらで単なるassociationだけでは面白くなくて、モダリティを分けな いようなディスプレイ、ボディソニックのように音と振動覚がいっしょになったもの、ワールドカップサッカーの会場の熱気のような漠然とした高揚感が伝送できるかといったこ となどは面白いかもしれない。具体的に五感情報通信にどのようなありがたみを付けるかという点については難しい。再現するというのではなく、消すという方向も少し考えても てもよいのではないか。 イ.我が国が取り組むべき研究開発課題とその目標、推進方策 事務局より、資料5−6〜 資料5−10に基づき下記の項目について説明。 ・国内外の公的機関における五感情報通信技術に係る研究開発動向について ・五感情報通信技術の研究開発マップについて ・各感覚チャネルの特徴について ・五感情報通信技術の技術開発ロードマップについて ・五感情報通信技術の研究開発の推進方策に関する論点について 【主な質疑応答】 安田構成員: 味覚、嗅覚、触覚にコピー通信はないので、各感覚チャネルの研究開発の進展度合いについては、ロボット通信/シミュレート通信とコピー通信の場合分けをして考える必要がある。視覚、聴覚についても認識の部分についてはまだまだレベルは低い。 土井構成員: 匂いをなくす等、必要な情報だけを活かすためには、不要なものを打ち消すことが重要である。これまではニオイを消すためにはニオイを使うと考えられてきたが、音を消すために振動を与えると同期して音が消えるといったことが可能かもしれない。二つ の感覚を使うことによって実現できるかもしれないことといった点が資料にクローズアップされていないので、アイテムとして追加するのがよいのではないか。 廣瀬座長: コピー・ロボット・シミュレートの実現イメージはVRの世界ですでに語られている部分に影響を受けている。通常のVR的なものの上に五感が積み重なっているのであり、 五感はばらばらではなく、相互相関している点が重要であるがこの部分が反映されていない。 鳥居構成員: 視覚、聴覚、触覚については物理的な刺激をどう受け取るかということで、そのメカニズムがシンプルであり既存の技術でできてしまう。味覚と嗅覚はケミカルセンシスであり感覚器だけでなく脳が関係しており、味覚・嗅覚の研究の遅れは、脳の研究が遅 れているというのが1つの原因である。味覚・嗅覚の進展度合いが遅れているのではなく 難しさの度合いが視覚・聴覚とは異なるということである。社会的ニーズからいうとこれに快・不快が重ならないといけない。 快・不快の部分をどう取り扱っていくかということが重要である。快・不快の判断を情報通信の中でどのように行うか扱うかということを入 れていかないと社会性を得られないのではないか。人の感じている脳の感覚を遠隔地に送ると答えが返ってくるような仕組みを提供することにより、一般の人のクウォリティオブライフを向上させることができるのではないか。五感情報通信で、診断だけではなく答えを出してくれるようなものができれば社会的なアクセプタンスが上がるのではないか。 澤野構成員: 国の支援が味覚、嗅覚の分野の研究にぜひとも必要である。 中山構成員: 相互作用という意味で言えば各感覚ともに対等である。むしろ味覚、嗅覚のほうがたくさんやられているかもしれない。相互作用という面からみれば、各感覚毎の研究開発が進んでいる遅れているは関係ない。 廣瀬座長: 研究推進体制についても感覚を分けて考えると単なるassociationになってしまうので、違う表現の方法が必要である。感覚別のグループにしてしまうと相互の連関がう まくとれないかもしれない。 中山構成員: 生理・心理の位置づけを各感覚と横並びにするのではなく、生理・心理により 全体をまとめる形にした方がよい。 廣瀬座長: モダリティを越える部分に新規性を置くというのがここでの1つの了解事項であ り、新規性を主張できる部分である。 澤野構成員: 嗅覚・味覚と生理学・心理学は一体である。一つのグループにしてもおかしく ない。 池井座長代理: 五感情報通信の重要なところは、臨場感ということである。それをばらばらなassociationとしてではなく、統合して伝達するテクニックの中に新しい方法を入れていくということが五感情報通信の研究を行う意味である。五感情報通信についてもアモー ダルな特性をうまく取り込んだ「臨場感」に変わる言葉があるとよいのではないか。 視覚 聴覚・触覚についてはVRの分野でデモンストレーションが見られるが、味覚・嗅覚を含めた他の感覚と連動させたデモンストレーションができると注目を集めることができるのではないか。 安田構成員: 推進方策の部分にどんな成果でどんなビジネスができるか、何に使うのか、市場性があるのか、といった点について触れておく必要がある。研究推進体制案については、各感覚グループの上に相互作用グループもしくは相乗効果グループをまず立ち上げることが重要である。それぞれの感覚についてはそれぞれの専門家にお願いすればよいのではないか。資金提供をどうするのかという点についてもどこかで触れておく必要がある。 廣瀬座長: 研究推進体制案1では、研究プロジェクトの具体的な内容で勝負するという感じになるのだろうか。 安田構成員: それぞれのグループは存在するが、相乗効果の部分を強調し、それをこの研究会でやるということが正しいのではないか。 鳥居構成員: 横軸が感覚別のグループで、総合的に考える部分が縦軸ということになる。感覚毎に専門の生理学者、心理学者が担当することになるのではないか。縦軸をどうするか ということが問題である。 畚野構成員: 出稼ぎで集まってやるということになるのではないか。 廣瀬座長: 出稼ぎ先が研究プロジェクトのような形になっているのは問題があるのではない か。 事務局: 出稼ぎ先としては五感情報通信の研究開発情報の交換・共有の場と運営ボードを考えている。研究プロジェクトは各感覚毎に行われるものであり、研究会では資金援助などどのような形で支援していくかを考えていくのではないかという意図で研究推進体制案1 は作成されている。縦軸は五感情報通信の研究開発情報の交換・共有の場ということでよいのではないか。 鳥居構成員: ケミカルセンシスとメカノセンシス(物理的な光などを媒体とするもの)は、 若干違いのあるものとして考慮する必要がある。 廣瀬座長: 案1では役所のやりたい内容はプロジェクトとして行い、草の根的な内容のものについては公募という形で募集する。案2はもう少しトップダウンである。 広田構成員: 研究プロジェクトというのは研究領域を提案していくということなのか、それ ともおもしろそうな組み合わせのものについてなにかやっていくということなのか。 事務局: まさにそこの議論を運営ボードで考えていけばよいのではないか。 廣瀬座長: 二感だけでも非常によく融合しているといった具体的なテーマがあったとしたら 重点的に進めていくということもありうるのだろうか。 事務局: それはありえる。目標設定の話である。 廣瀬座長: 最初から運営ボードが計画してやる部分と後から出てくる部分があってもよいのではないか。運営についてはここで具体的に揉む必要がある。 片桐構成員: 研究推進体制と実現イメージの間の関係はどのように考えればよいのか。 廣瀬座長: 各研究プロジェクトの中に具体的な内容が入ってくると考えている。先ほどの縦軸・横軸によるマトリックスを考えた場合に、このマトリクスがうまく埋まるような形で 研究計画的なイメージを立てておく必要がある。 片桐構成員: 五感のいろいろなモダリティがある時にこれらを統合するということが重要で あるが、トランスファ(1つのモダリティを別のモダリティで表現する)ということも重 要である。現実的なアプリケーションを考えるよりは、トランスファということを考えた 方が社会的にアピールできるのではないか。 廣瀬座長: VRの場合でも実写映像でいく部分とCGを使う部分がある。ビジュアライゼーショ ンという分野がトランスファにあたる。五感通信の場合にも実際にないものに触るといったことも考えられるので、こういったことが無理なく落とし込めるようなフレームワーク を作っておかなければならない。 D その他 ・事務局より、資料5−11に基づき審議スケジュールの変更、当面の審議スケジュー ルについて説明した。 ・次回の研究会、WGの開催日については別途連絡することとした。 以上 http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/gokan/010418_1.htm |
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