五感情報通信技術に関する調査研究会(第4回) 議事要旨


1 日 時:平成13年3月8日(木) 10:00~12:15
2 場 所:総務省 第3特別会議室(6F)  

3 出席者(順不同、敬称略)   

座 長:廣瀬(東京大)  

構成員:
阿部(東京大)、
片桐(ATR:代理 加藤氏)、
小宮(資生堂)、
阪田(NEC)、
澤野 (高砂香料)、
土井(東芝)、
鳥居(味の素)、
西条(富山医薬大)、
平原(NTT)、
広田(東京大)、
森泉(東工大)、
安田(東京大)   

事務局:
島田課長補佐、
瀬戸下係長、
小川(技術政策課)

4 配布資料  

資料4-1 五感情報通信技術に関する調査研究会(第3回会合)議事要旨(案)  
資料4-2 5感情報の記録・通信と匂い情報  
資料4-3 フランステレコムプレゼン資料  
資料4-4 五感情報通信を活用するインターフェース技術  
資料4-5 報告書構成案  
資料4-6 諸感覚間の相互作用について  
資料4-7 研究開発の推進方策について  
資料4-8 五感情報通信技術のニーズ  
資料4-9 五感情報通信技術の研究開発ロードマップ  
資料4-10 今後の審議スケジュール  
資料4-11 聴覚情報通信技術の動向と課題・目標

5 議事の概要
(1) 開会
(2) 議事  

① 前回議事要旨の確認について    
事務局より資料4-1に基づき説明。コメントがあれば事務局まで連絡することとした。  
② 五感情報通信の研究・技術動向について   
ア 平原構成員から、資料4-11に基づき「聴覚情報通信技術の動向と課題・目標」 についてプレゼンテーションがあった。   
イ 森泉構成員より、資料4-2に基づき「嗅覚情報通信技術の課題・目標・試み」 についてプレゼンテーションがあった。

【主な質疑応答】

廣瀬座長 においのセンシングには参照のにおいが必要とのことだが、不要ではないか。

森泉構成員 センサの信頼性が非常に高まれば不要であるが、現状ではセンサの信頼性・安定性の問題があること、また、再生には非線形性があることと、再生を意識していることから、参照のにおいが必要である。 ウフランステレコム(株)より、資料4-3に基づきインターネット上でにおいを配信する実験システムについて、説明及びデモンストレーションがあった。

【主な質疑応答】

森泉構成員 においの伝達の場が重要。伝達の場は空気であり、空気がどう流れているかについて配慮されると良い。

平原構成員 
においを発散するデバイスの中には、においの素が入っていて、なくなると交換しなくてはいけないのか、それとも周囲のものから合成しているのか。

フランステレコム カートリッジの中に既に出来上がったにおいが入っており、それを発散する仕組みになっている。

安田構成員 首からかけるものもそのような仕組みになっているのか。

フランステレコム その通り。首からかけるものは、液体状のものが入っている。  60の小さな容器が入っている。今回のものはプロトタイプであるが、次のバー  ジョンでは、名刺状のカードに200のにおいを入れることができるようになる。

安田構成員 200のにおいはどのように選択するのか。

フランステレコム 使う人が選ぶことになる。カートリッジの役割を果たすカード  は、恐らく日本円にして100円程度の安価なものになる。雑誌などを通じて無 料配布することも可能になるだろう。

廣瀬座長 においのカートリッジは、何回ぐらいにおいを発散させることができるのか。

フランステレコム
 1回が数秒として、
2000回においを発散させることができる。

廣瀬座長 においの出るタイミングに対し実際ににおいの出るまでに時間があるようだ。においを発生させるときの仕組みとして、ヒーターを利用しているのか。

フランステレコム においを発生させる仕組みは2種類ある。電熱と、ファンを利 用している。現在はプロトタイプの段階なので、実際ににおいがでるまでに確か  に1,2秒のズレが生じるが、今後改良されていくものと考えている。

片桐構成員(代理:加藤氏) インターネットの場合だと、頻繁ににおいを変えていく場合も多いと思うが、その際に前のにおいが残っていると効果が弱まるもの  と思う。においを瞬間的に消す技術は開発しているのか。

フランステレコム 現在数ナノリットルと非常に微量のにおいを発散しており、においの残存はないと考えている。このため30秒から1分でにおいを切り替える  ことができると考えている。

鳥居構成員 しかし、実際にはにおいが残っているように思う。人間の知覚には適用能力があるが、その限度を超えると混乱してしまうと思う。

フランステレコム その問題は承知しており、非常に微量なにおいを出すよう改善するようにしていきたい。また、ユーザーのテストも行っている。

エ 土井構成員より、資料4-4に基づき「五感情報通信を活用するインタフェース技術」について、説明及びデモンストレーションがあった。

【主な質疑応答】

安田構成員 瞬時性として1000分の1秒程度必要だとのことだが、その時間内で送るべきものは何か。画像も入るのか。

土井構成員 画像は不要だと考えている。視覚は1000分の1では理解できない。触覚とか味覚では理解できると思うが視覚は100分の1とか10分の1など少し遅くても良いと考えている。しかし、同じ視覚情報でも「動き」の場合は100分の1以下でないといけない。視覚情報と言ったときに動きと捉えると100分の1以下だし、画像と捉えると少し遅くても良いのではないか。この場合でも 現行のテレビ画像(1秒間に30枚)より遅くなると不自然になる。

安田構成員 表情の変化だともう少し早くないといけないのではないかという気がしないでもない。

土井構成員 指摘の通り表情については難しい。

③ 我が国が取り組むべき研究開発課題とその目標、推進方策について 事務局より、下記について、資料4-5~4-9に基づき下記の項目について報告及び説明。  ・ 報告書構成案について  ・ アンケート結果について(諸感覚間の相互作用及び推進方策)  ・ 五感情報通信技術のニーズについて  ・ 研究開発ロードマップについて

【主な質疑応答】

安田構成員 資料4-8(五感情報通信に対するニーズ)の生活の多様化に関して、 エンターテイメントはどこに含まれるのか。

事務局 
「映画、飛行体験、世界旅行体験等」に含まれる。

安田構成員 資料4-8の内容は、資料4-5(報告書構成案)のどの項目に当たるのか。

事務局 第3章の五感情報通信の実現イメージに反映させる予定。

阿部構成員 相互作用に関係すると思うが、味覚のディスプレイについては、リトマス紙みたいなものに味を含ませたものを口に入れるというものぐらいしか考えられず、五感といっても技術レベルに差ががあり、現時点では味覚は視覚や聴覚 のようにはいかないと思う。

しかし、五感を全部まとめて、全てが相互作用しているという感覚で捉えるのは非常にユニークであり、10年先には一番重要なことになる。生物は本来、まず
五感を総動員して外来情報に対処し、そうして適正な行動をとり、生命を維持するのだから、これは人類にとって絶対に重要なことだと思う。今回の研究会は五感をまとめてやろうという視点が非常にユニークであり、他で はなかったこと。

10年前にゲノムの解析をして何になるという議論があって、イネゲノムの解析を一度ストップしたことがあるが、ここ2、3年になってゲノ ムが絶対必要だと言うことになり急に
何十億というお金を投入したが、手遅れのような気がする。その轍を踏まぬためにも、10年先を見越して、今、五感総合研究を開始していただきたい。この研究には夢がある。

廣瀬座長 今の指摘は非常に重要。報告書案では、第3章に反映させる形になるだろう。指摘に関して、第2章の2-2~2-6は五感にそれぞれに分かれている が、もう少し五感を明確に分けないようにする形か量的にコンパクトにすると良い。 味覚のディスプレイについては、個人的にはリトマス試験紙のようなものでも かまわないような気がするが。

阿部構成員 先ほどの嗅覚のデモンストレーションと同じような発想ならその通り。 嗅覚の場合でも、Aというにおいはちょっと嗅げば良いが、Bというにおいを知覚させるためにはどれだけ持続させて、量がどれくらいいるかといったソフトの 部分がある。それは基礎科学がきちっとでき上がっていないと分からない。プロ トタイプを作るのは簡単たけど、プロトタイプをいかに発展させていくかという ソフト面の研究は、基礎科学が必要。

廣瀬座長 視覚の場合でも、テレビに画像を出すだけなら簡単だったが、コンテンツの中に集約していくためには、映しにくいものをどうやって映すかといった運用技術が重要となる。

まずディスプレイができないとこのような議論は始まらないので、とにかくある種の突破口、ディスプレイ・センサ・伝送系を開く部分が必要だ、というある種の意志の部分を前書きなどに書くことが必要だと思う。
国が研究開発を行うことは、このような点が大事だと思う。

鳥居構成員 重要なことは、今既に我々が感じている情報から次元を落とした形での情報交換では、納得性が得られないということ。信頼性のある情報を得ようとすれば、基礎的な部分の研究は絶対必要。

味覚・嗅覚の研究は決して遅れているわけではないが、対象があまりにも多岐に渡っているのと、脳で最終的に理解しているところのプロセスがよく分からない状況。

味やにおいの知覚に関して、良いか悪いかの判断が必ず入っているが、視覚については、見えているものが良いか悪いかという判断はあまりないと思う。

味やにおいは、体に吸収されるものが 多いので、良いか悪いかのアクセプタンスが非常に重要となり、情報源に対する 入り口が狭まっている部分がある。どういう情報がキーポイントか洗い出して、 脳での処理の過程が分からないといけない。

ロードマップにある、
感覚器から脳への神経伝達経路はほとんど分かっている。 つまり、入力系は麻酔がかかっていても全部分かる。

ところが、出力系として、 行動に移す部分が解明されていない。情報をまとめる場合に、分かっているもの  をまとめるのではなく、脳の情報の処理過程の中で、どこが分からないから結局  今まで具体化しなかったのかというところを書かないといけない。脳での認知機能についてどこまでわかっているのかということを正確に報告書に反映したほうが良いと思う。

廣瀬座長 分かってない部分をアピールするすることと、基礎研究の場合は、全般的に基礎研究を行うということでなく、例えばある特定のディスプレイを作るに はこういう基礎研究をきちっとやらないといけないというようなことを書くと良 いと思う。

安田構成員 今までの議論では、視と聴が進んでいるような話がされているが、単に見えるもの、聞こえるものを送るという技術については、視も聴も進んでいると思うが、本当に自分にとって良い絵なのか悪い絵なのかというのは分かっていない。

表情を理解するのに何秒かかるかというのも分かっていない。においや味は、良いか悪いかの判断がないと元々役に立たないという話になっているが、同 じように視覚、聴覚を考えるとまだまだ同じレベルだと思う。認知まで考えてきちっと考えるとなると視覚についてももっと研究しないといけないだろう。報告書ではどこまでを範囲にするかは考えないといけない。

土井構成員 ヒューマンインターフェースを設計するときにはどうやって利用するかということしか考えていない。視覚、聴覚も伝えることはとりあえず伝えているが、それが本当に人間に伝わっているかは分からない。特に、雑音の中の言葉は、どちらかといえばちゃんと伝わっておらず、特に音声認識の場合は、雑音の中ではほとんど認識できない。

そういう点では、本当のフィールドに出たときに、 視覚聴覚だけでも成り立つ技術はない。欠けている情報を補うときに、五感それぞれの感覚の中について解決しようとするのではなく、コミュニケーションでは  相手の距離をつめるといったように他の感覚を使って情報を補っており、五感をどのような目的に使っているのかを考えることが意味のある話だと思う。

片桐構成員(代理:加藤氏) ニーズに関し、滅び行く文化の保存というのはニー ズとして非常に大きいと思う。現在滅び行く言語の保存として、文字情報や音声 情報の保存が行われているが、これだけでは保存したことにはならない。例えば、 味に関する言葉は、味の情報がないと保存したことにならない。滅び行くものだけでなくとも、文化の包括的な保存というニーズも加えるべきだと思う。

廣瀬座長 これは、資料の、教育と生活の中間ぐらいの話だと思う。今指摘されたようなことまで含めて、学校・博物館系という感じで表現を変えてみてはどうか。

森泉構成員 平原構成員のプレゼンテーションの中で、言葉を単に切り取って出すと理解できないが、切り取った部分に雑音を入れると言葉を補って理解できるという話があったが、その場合、ノイズではなくて単純音を与えた場合はどうか。

平原構成員 切れずにつながって聞こえる条件が分かっており、声の音を完全にマスクすることができる音ででれば、ノイズでなくとも再現される。音の切れ目が分からなくなるような音であるのが条件。

森泉構成員 ニーズでは教育が重要だと思うが、教育では、考える時間、考えることを与えることが重要であり、与えすぎることによってマスクされてしまい考えないということになる。このことは非常に重要だと思う。

廣瀬座長 出す方ばかりでなく、無臭の状態をどうやって作るのかという話もあったが、このことは原理的にも面白いし、実際的な問題でもある。

④ その他 ・ 次回会合は4月18日午前10時から、総務省第1特別会議室で開催することとし、詳細については後日連絡することとした。  
                                  以上

http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/gokan/010308_1.html
 



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